月配列

匿名掲示2ちゃんねる「新JIS・月 キーボード配列」スレッド発祥の「かな入力」手法。
新JISかなの【遺志を継がなくてはならない】という発想で作成されたようにも見えるが、真相は不明である。

配列の起源 新JIS(JIS X 6004)

かつて、通称「新JIS」という改良型カナ配列がJIS規格として存在した(規格番号JIS X 6004「仮名漢字変換形日本文入力装置用けん盤配列」、1999年に規格廃止となっている。)。
この「新JIS」では、操作性に優れた日本語キーボードの実現を目指し、既存の「かな入力(JISかな)」の利点である「カナを探し当てやすいこと」を捨て、高速打鍵向きの、指の動きに合わせた合理化を積極的に推し進めた。
既存のかな入力よりも狭い3段の範囲をシフトで2面に切り替えて、すべてのカナ文字を配列している。
片方の手に打鍵が連続して偏ってしまわないこと、シフトの量が最低限であることなど、複数の条件を充たす配列が吟味され、決定された。
「新JIS」は柔軟なシフト機構を持つ。

  • 従来と同じく「シフトを押しながら」のシフト操作が可能である。
  • シフトキーを押してからシフトしたいキーを押す(シフトキーを押し続ける必要はない)、「プレフィクス形シフト」操作も可能である(この方式は高速打鍵に適しているとされた。)。

(詳しくは「仮名漢字変換形日本語文入力装置用けん盤配列」「タイピストにおける指の運動特性について」などを参照のこと)

シフト方法は花配列を流用

一方で「花配列」という、やはりシフトでキーを2面に切り替えて用いるカナ配列が提案された。この花配列で特徴的だったのは、シフトキーが中指……文字キーのど真ん中に配置されている(中指シフト)ことと、前述の「プレフィクス形シフト」方式を採用していることである。
新JISでは小指外方シフトを用い、専用のソフトウェアを用意しなければ実現することが難しい。またシフトキーの位置もあまり洗練されておらず、かならずしも打ちやすいとはいえなかった。その点花配列では、本来文字キーであるD,Kキーでシフトする方式をとったため、シフト操作をそのまま「特殊なローマ字綴りの入力」とみなせば、ローマ字変換テーブルを書き換えるだけでPCへの実装が簡単にできるし、しかもシフトが楽で合理的であった。

新JIS・花配列から月配列へ

「【ローマ字,仮名,親指?】新JIS配列キーボード」という2ちゃんねるスレッドにおける議論が発端となり、月配列の開発が開始された。
新JISの文字配列自体が優れていることは、いくつかのテストや、実際に使用してみた有志によって確認された。しかし結局新JISを実用するユーザーは数人しか確認できず、新JISが絶滅に瀕していることは明白となった。その理由として競合他方式とのシェアの削り合いがあったとか、小指でシフトキーを押す方式がよくないのではないかとかのさまざまな意見があるが、定かではない。
新JIS配列に好感触が得られたため、さらに快適に利用するべく文字配置やシフト等の改良が試みられてゆく。特にスペースキーをシフト操作に併用し、親指でシフト操作する案(通称SandS)は使い勝手がよく、現在も推奨される。
ここまでに蓄積された新JIS配列を改良しようとする意見から、のちの月配列を方向付ける2,3の原則が確認できる。

  • 基本的に、新JISの文字配置を利用する
  • 小指のシフトキーは用いない
  • 専用キーボードや特殊なソフトウェアを用いない

やがて花配列の中指シフトを真似て、新JISをそのまま中指シフト化する案が表れた。当初はそのあまりの安直さに、「悲惨な結果」が危惧されたほどである。これが月配列最初のプロトタイプ、1-390となる。

結果から言うと、新JISほど中指シフトに適した配列はなかったのである。

  • もともと新JISは、花配列と同じくプレフィクス形シフトを前提に作られていた。
  • シフト操作と文字打鍵とが互いに邪魔にならないように計算されており、中指シフト化してもその恩恵にあずかることができた。
  • また花配列は、手の縦移動が多すぎると度々指摘されていたが、中指化した新JISでは手が落ち着き、花配列と比べても改良となった。

中指シフトの本命は、花配列から月配列に移ったといえよう。

月配列の現状

「月配列」は「新JISかな」配列におけるシフトキーを、「花配列」と同じ中指ホーム段文字キーに再割り当てし、一連の微調整を行ったものである。
特定の団体が作成したものではなく、あくまでも個人ベースでの開発が進んでいる。そのため固定されたカナ配列は存在せず、個々人がそれぞれ独自の思想に沿って改良を繰り返しているのが現状である。
また個人ベースで開発されているため、「他のかな入力方式」での成果や打鍵感覚をそれぞれに取り入れている例も存在する。

参考として、事実上の標準配列となっている「月配列2-263版」を以下に示す。

そのまま打鍵すると出る文字。

そこしてょ つんいのりち
はか☆とた くう★゛きれ
 すけになさ っる、。゜・

注)「☆(D)」「★(K)」はシフトキーとして使用する文字キーである。


「☆(D)」または「★(K)」を押した後に打鍵すると出る文字。

ぁひほふめ ぬえみやぇ「
ぃをらあよ まおもわゆ」
 ぅへせゅゃ むろねーぉ

「月配列2-263版」の主な特徴

  • 頻度の高いカナは1打鍵で、頻度の低いカナは2打鍵で打つ方式である。
  • 濁点、半濁点はJISかなと同じく清音に後置する。
    • 濁点付き文字・半濁点付き文字を別の文字と見なす場合、先の説明はこう言い換えることになる。
      • 頻度の高いカナは1〜2打鍵で、頻度の低いカナは2〜3打鍵で打つ方式である。
  • 小指シフトキーを必要としない。また新JISかなとは異なり「\」をシフトキーとして定義せずとも容易に交互打鍵を実現できる。
  • 元となった「新JISかな」は高校教科書のかな連なり頻度をベースに設計されており、本質的に「断定調の文書」「事務文書」などの作成には特に向いている。
  • 用途や操作形態を別にする人による「私家版の月配列」の基礎となっている。

月配列の他仕様について

中指キー「D」「K」のみではなく、薬指キー「S」「L」も使用する中指・薬指シフト方式も考案されている。
「月配列2-263版」では濁点・半濁点を後押しとしたため、

  1. 「☆(D)」または「★(K)」のシフトキー
  2. シフト側の文字キー
  3. 濁点または半濁点のキー

を押すと最大3打鍵を要するが、この操作を避けて全てのカナを2打鍵以内で入力するために「そのまま打鍵すると出る文字」を2字減らし、シフト面を更にもう一面追加する案である。
また、更にシフトを増やし、(月配列では最大5打鍵を要するパターンが存在する)「拗音節」の一部を3打鍵以内で入力できる配列も考案されている。


一方で、「断定調の文書」「事務文書」ではあまり使われない「です・ます調」を主体とする文章には不向きではないかという言及が稀に見られる。
この点を改善した一例としては「月配列U9版RC」があり、親指シフト系の「飛鳥配列」からヒントを得て「て」の位置を見直すなどした次の配列を公開している。

「月配列U9版RC」を以下に示す。

そのまま打鍵すると出る文字。

ゅとしこょ つんいかり
は★☆てた くう☆★きち
 すをになさ っるのもー・

注)「☆(D・K)」「★(S・L)」はシフトキーとして使用する文字キーである。


「☆(D)」または「☆(K)」を押した後に打鍵すると出る文字。

ぁゃねらめ ぬむみえぇ
ぃけ、あれ まおほそへ
ぅやせよゆ ひわふろぉ


「★(S)」または「★(L)」を押した後に打鍵すると出る文字。

!どじご〜 づぴぽが?
ばげ。でだ ぐヴぼぞぎぢ
ずぱぜ■ざ びぷぶべぺ

注)■は未定義である。